高血圧
高血圧は、自覚症状が乏しいためについ放置されがちですが、全身の血管に負担をかけ続ける病態です。放置すれば大きな病気になる可能性を高める要素(リスク因子)となる高血圧ですが、早期に適切な対策を講じることで、将来の健康を守ることができます。当院では、患者さん一人ひとりのライフスタイルに合わせた、続けやすい治療プランをご提案いたします。
高血圧の症状について
高血圧は、血圧がかなり高い状態であっても、多くの場合はっきりとした自覚症状が現れません。私たちは日々の診療の中で、健康診断で指摘されて初めてご自身の血圧が高いことに驚かれる患者さんに多くお会いします。症状がないからといって放置してしまうと、血管は着実にダメージを受け続け、ある日突然、重大な合併症を引き起こす恐れがあります。
ただし、血圧が急激に上昇した場合や、非常に高い数値が続いている場合には、以下のような体調の変化を感じることがあります。これらの症状は他の病気でも見られますが、高血圧が隠れているサインである可能性もあります。
- 頭重感や頭痛(特に朝方に後頭部が重苦しく感じることがあります)
- 肩こりや首筋の張り
- めまいや耳鳴り
- 動悸や息切れ
- 手足のしびれ
- のぼせや顔の火てり
これらの症状を単なる疲れや加齢のせいだと思い込んでしまうことは危険です。高血圧によって血管に過度な圧力がかかり続けると、脳や心臓、腎臓などの重要な臓器に障害が及びます。自覚症状が乏しいからこそ、日頃から家庭で血圧を測定する習慣を持ち、数値の異常を早期に察知することが何よりも大切です。当院では、患者さんがご自宅で正しく血圧を管理できるよう、測定のタイミングや記録の方法についても丁寧にご説明しています。
高血圧の原因について
高血圧の原因は、大きく分けて二つのパターンがあります。日本人の高血圧の約9割を占めるのが「本態性高血圧」と呼ばれるもので、特定の原因疾患があるわけではなく、遺伝的な体質と生活習慣が複雑に絡み合って発症します。もう一方は、他の病気が原因で血圧が上がる「二次性高血圧」です。私たちは専門医の視点から、どちらのタイプであるかを正確に見極めることから治療を開始します。
生活習慣に関連する主な原因
生活習慣の中でも特に影響が大きいのが、食塩の過剰摂取です。塩分を多く摂りすぎると、体内の水分量が増えて血圧が上昇しやすくなります。福岡の美味しい食事には塩分が高いものも多いため、工夫が必要です。また、以下のような要因も血圧を押し上げる大きな理由となります。
- 肥満(特に内臓脂肪型肥満は血圧を上げる物質を分泌させます)
- 過度な飲酒(血管に影響を与え、自律神経を刺激したりします)
- 運動不足(血管の柔軟性が失われ、血圧が上がりやすくなります)
- 精神的なストレス(交感神経を刺激し、心拍数や血圧を高めます)
- 喫煙(血管を傷つけ、一時的にも血圧を急上昇させます)
遺伝的な要因と加齢
ご家族に高血圧の方がいらっしゃる場合、体質的に血圧が上がりやすい傾向を受け継いでいる可能性があります。また、加齢とともに血管は弾力性を失い、硬くなる傾向があります。血管が硬くなると、血液を送り出す際により強い圧力が必要になるため、高齢になるほど血圧は上昇しやすくなります。
高血圧の病気の種類について
高血圧はその原因や発生の仕組みによって、いくつかの種類に分類されます。当院では、単に血圧を下げるだけでなく、どの種類の高血圧なのかを診断し、それぞれの特徴に合わせた最適なアプローチを選択します。特に二次性高血圧の場合は、原因となっている病気を治療することで、血圧が劇的に改善したり、高血圧そのものが消失したりする場合もあります。
本態性高血圧症
特定の病気がないにもかかわらず、体質、加齢、生活習慣などが原因で起こる高血圧です。日本人の高血圧患者さんの圧倒的多数がこのタイプに該当します。長期的な付き合いが必要になることが多いため、私たちは患者さんが無理なく、安心して治療を続けられる環境作りを重視しています。
二次性高血圧症
身体の他の部位にある特定の疾患が原因で、二次的に血圧が高くなる状態です。若年の方や、急激に血圧が上がった方、薬が効きにくい方の場合は、この二次性高血圧を疑う必要があります。原因となる代表的な疾患は以下の通りです。
- 腎実質性高血圧・・慢性腎炎などが原因で起こります。
- 腎血管性高血圧・・腎臓の血管が狭くなることで血圧が上がります。
- 内分泌性高血圧・・副腎などから血圧を上げるホルモンが過剰に出る病気です。
- 睡眠時無呼吸症候群・・寝ている間の無呼吸が交感神経を刺激し、血圧を高めます。
白衣高血圧と仮面高血圧
診察室で測定したときだけ血圧が上がる「白衣高血圧」や、逆に診察室では正常なのに自宅では高い「仮面高血圧」というタイプもあります。特に仮面高血圧は、医師の前では正常に見えるため見逃されやすく、脳心血管疾患のリスクが高いことが分かっています。私たちは家庭血圧の記録を重視し、患者さんの真の血圧の状態を把握するよう努めています。
高血圧の治療法について
高血圧治療の究極の目的は、血圧の数値を下げることそのものではなく、脳卒中や心筋梗塞、人工透析が必要になるような腎不全などの深刻な病気を防ぐことにあります。治療は大きく分けて「生活習慣の改善」と「薬物療法」の二段構えで行います。
生活習慣の改善(非薬物療法)
軽症の高血圧であれば、生活習慣を見直すだけで血圧が十分に下がることも少なくありません。また、薬を服用する場合でも、生活習慣の改善を併用することで、薬の量を減らすことが期待できます。
- 減塩指導・・1日6グラム未満を目指し、出汁や酸味を活用した工夫を提案します。
- 適切な体重管理・・無理のない減量をサポートします。
- 運動療法・・ウォーキングなどの有酸素運動を、週に数回、定期的に行うようお勧めしています。
- 節酒と禁煙・・血管への負担を減らすため、具体的なアドバイスを行います。
薬物療法
生活習慣の改善だけでは十分に血圧が下がらない場合や、すでに合併症の危険がある場合には、降圧薬(血圧を下げる薬)を使用します。現在では非常に多くの種類の薬があり、患者さんの年齢、合併症の有無、体質に合わせて最適な薬剤を選択することが可能です。
薬を開始することに抵抗を感じる方もいらっしゃいますが、最近の降圧薬は副作用も少なく、非常に安全に管理できるようになっています。大切なのは、自己判断で服用を中止しないことです。
高血圧についてのよくある質問
Q1. 血圧の薬は一度飲み始めると、一生やめられないのですか?
A1. 必ずしもそうではありません。生活習慣の改善によって血圧が安定し、お薬の量を減らしたり、完全に中止したりできるケースもあります。ただし、自己判断での中止は危険ですので、必ず医師と相談しながら進めていきましょう。
Q2. 上の血圧と下の血圧、どちらが重要なのでしょうか?
A2. 基本的にはどちらの数値も重要ですが、特に高齢の方では上の血圧(収縮期血圧)が高いことが脳心血管疾患の強いリスクになることがわかっています。また、下の血圧(拡張期血圧)だけが高い場合も、将来的に上の血圧も上がってくる可能性があるため、注意が必要です。
Q3. 上手な家庭血圧の測り方を教えてください。
A3. 朝は起床後1時間以内、トイレを済ませた後に、座った状態で1-2分安静にしてから測定してください。夜は就寝直前の安静時に測るのが理想的です。毎日同じ条件で測定し、記録をつけることが、正確な診断の助けとなります。
Q4. 血圧が高いと、どのような食べ物に気をつければ良いですか?
A4. 塩分を控えることはもちろんですが、腎臓が悪くなければカリウムを多く含む野菜や果物(腎機能に問題がない場合)、マグネシウムを含む海草や豆類を積極的に摂るのがお勧めです。当院では管理栄養士と連携した食事相談も行っておりますので、お気軽にご相談ください。
